アルパチーノ映画で盲目の退役軍人役がタンゴを踊って魅せる”男の美学”をセントオブウーマン夢の香りで!

マーティンブレスト監督の「セントオブウーマン/夢の香り」(1992)における短気で盲目のフランク・スレード米陸軍中佐役の演技でアルパチーノは翌年のアカデミー主演男優賞を受賞した。

 それよりも何よりもこの作品で
威厳のある堂々たる演技で、この盲目の退役軍人役に圧倒的な深みを刻み込んだアルパチーノという俳優には、心から惹き込まれてしまった。
私は公開時劇場の比較的前の席で目の当たりにした、
特に彼がタンゴを踊るシーンには、思わず「ブラボーっ!」と叫んでしまったほどだ。

200人のエキストラとスタッフを完全に魅了した アルパチーノ圧巻のダンスシーン!

高級ホテルのラウンジ。
美しい女性ドナ(ガブリエル・アンフォー)とタンゴを踊るフランク(アルパチーノ)は、見事なエスコートぶりでフロアに居合わせた人々を魅了し尽くす。

このシーンの撮影にはピエールホテルが選ばれた。ニューヨークの一流ホテルの一つである。ここでのロケは4日間。
ことダンスに関してはド素人と言っても差し支えないはずのアルパチーノであったが、本番では極め付けの優雅さでステップを踏み、
スタッフと200人のエキストラから感嘆の声が漏れた。

タンゴの振り付けをしたのは、ポール・ペリコロとブロードウェイミュージカルの舞台経験もあるジュリー・ミッチェルである。
アルパチーノは正真正銘の芸術家。抜群のフィーリングと役者として訓練された身体に非常に驚きました。」
 「吞み込みが早く、教えるのは非常に楽でしたね。一緒に仕事が出来て、本当に素晴らしかったと思っています。」
と彼らはコメントし、口々にアルパチーノを絶賛。どうやらこの振付師たちもアルパチーノの魅力に取り憑かれてしまっているようだ。

・・・このシーンこそ、アルパチーノの舞台経験や舞台度胸が間違いなく味方してるんだと思うよ。盲目という設定の退役軍人役としてタンゴを踊って魅せる、まさに”男の美学”を体現してみせた、心に刻まれる作品だと思っている。

盲目という光のない世界へ、アルパチーノの役作り

スクリーンから溢れるアルパチーノの熱意は、観るものを必ず感動させるだろう。

彼はこの映画の役作りのためにニューヨークの盲人援助施設、盲人協会とライトハウスへ数ヶ月通い詰めた。フランクの行動の微妙なニュアンスの全てを自分のものにしようとしたからだ。
彼の目標は”盲人を真似ること”ではなく、視力障害そのものに対する理解を深めようとすることであった。
「アルパチーノは盲人がどう行動するかではなく、盲人であるということがどんな感覚なのか理解したい」と言っていたようだ。
こう語るのは、盲人協会スタッフのジーン・デザットさんである。

「彼は特に外傷などで視力を失った人に会いたがっていたわ。目の不自由な方々と長い時間一緒に過ごして、彼らがなぜ盲目になったのか、そしてそれに同かいおうしたのかを熱心に質問していました。」

このリサーチでアルパチーノは、2度と見ることができないと知った瞬間の絶望感、そして目の見えない現実を受け入れ、適応していくまでの感情をしっかりと学び取っていたようである。

また、ライトハウスでは、盲人の暮らし方を身につけることに力を注いだ。杖を使って歩くこと、電話の使い方、椅子を探して座る仕草やビンからお酒をコップに注いだり、タバコに火をつける仕草、そういった細かな動作の指導を受けたのだった。

ライトハウスのスタッフから、
「彼は非常に仔細なことにまでこだわり、私はその熱心さに感動したわ。彼は盲人をリアルに演じることによって、盲人への心からの思いやりを見せてくれました。」と感激していた。

・・・さて、アルパチーノは完全に盲目のフランクになり切ることができたのか?この映画で共演した大学生のチャーリー役だったクリスオドネルにクランクアップ時に贈ったメッセージに、
私はオドネルが見えなかったが、君が素晴らしかったのはわかっているよ。」と書いていたという、粋なコメントを寄せていたことからもわかる。

この作品の”ストーリーの核”となるのは「人格」である

 ・・・この作品は1992年制作だが、現代2025年にも通ずる普遍的なテーマが盛り込まれているようだ。
我々の生きている社会は個人の人格が見失われた世界だ。「人格」が「能力」にすり替えられてしまっていると言ってもいい。
「あなたは誰なのか?」
よりも
「あなたは何ができるのか?」
の方が課題となっている。
 例えばこの作品のストーリー中、チャーリー(クリス・オドネル)のような学生は、現代においては評価が低い。それは、将来性や社会貢献が低いとみなされるからだ。フランク(アルパチーノ)も最初はチャーリーを盲導犬ぐらいにしか思っていない。しかし、フランクはやがて、チャーリーの中に偉大な人物になる可能性を見出す。
それは若い頃にフランク自身が持っていた可能性そのものだ。
そして当時の体制に順応することなく、結局キャリアとしては大成することがなかった自分の中のダークサイドを、チャーリーが併せ持つことに気づくのだった。
そして、チャーリーがいつか自分と同じ間違いを犯す、と悟ってしまうのだった。
 フランクはチャーリーという人格を認めた時、彼自身も変わった。より気高い人間、”メンター”としての役割に気づくのであった。

この映画の”現代へ送るメッセージ”とは?

・・・この映画に学ぶべき要素があるとしたら、
それは我々が自分自身の心を開き、人生の驚くような矛盾も受け入れる心意気があれば我々は今より前進できる力を見出せるようになるということである。
アルパチーノ演じる退役軍人のフランクが見せる”男の美学”が、若いチャーリーを共存する関係の中で導いてくれると強く信じられる、
そんな素敵な映画なのである

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